「原盤権」という言葉を、契約書やレーベルの話で初めて見て、戸惑った人は多いはずです。著作権は聞いたことがあっても、原盤権は説明できない——それは自然なことです。でも、この権利を知らないまま活動すると、サブスク時代のいちばん大きな収入源を、気づかず手放してしまうことがあります。この記事では、原盤権とは何か、著作権と何が違うのか、誰が持つのか、そして独立や退所のときに損をしないための勘どころを、やさしく整理します。
原盤権とは、ひとことで言えば「録音された音源そのものに対する権利」です。ここで大事なのは、「曲」と「音源」を分けて考えることです。
たとえば、あなたが作ったメロディと歌詞——これは「曲」で、著作権の対象です。一方、そのメロディをスタジオで実際に演奏・歌唱して録音したデータ——これが「原盤(音源)」で、原盤権の対象になります。同じ曲でも、録音し直せば別の原盤になります。カバーが分かりやすい例で、有名曲を誰かが歌い直した音源には、その録音を作った側に新しい原盤権が生まれます。
言葉で説明されてもピンとこないので、表で並べます。ここを押さえれば、契約書の8割は読めるようになります。
| 比べる点 | 著作権 | 原盤権 |
|---|---|---|
| 対象 | 歌詞・メロディ(曲) | 録音された音源 |
| 持つ人(原則) | 作詞・作曲した人 | 録音費用を出した人 |
| 発生のしかた | 作った瞬間に自動 | 録音した瞬間に自動 |
| 関わる印税 | 著作権使用料(作詞・作曲) | 原盤印税(サブスク等の再生収益) |
| 録り直すと | 変わらない(同じ曲) | 新しい原盤が生まれる |
作った瞬間に自動で権利が発生する点は、著作権と同じです。著作権の仕組みは自作曲の著作権はどう守る?で、印税全体の取り分は印税の内訳|作詞・作曲・原盤の取り分で詳しく解説しています。
原盤権の持ち主を決めるいちばんの基準は、「誰が録音の費用を負担したか」です。ここが著作権との一番の違いです。著作権は「作った人」ですが、原盤権は「お金を出した人」に紐づきます。
宅録やオンライン制作が当たり前になった今、自分でお金を出して録音し、原盤を自分で持ったまま活動する人が増えています。宅録のやり方を身につければ、原盤権をまるごと自分に残せます。制作を外注する場合の相場や流れは楽曲制作を依頼するにはにまとめました。
なぜ今、原盤権がこれほど大事なのか。それは、収益の入り口がサブスクの再生に移ったからです。SpotifyやApple Musicで曲が再生されたとき、生まれる収益の多くは原盤側に配分されます。つまり、原盤権を持っているかどうかが、長く聴かれ続ける曲の収入を左右します。
「作詞・作曲は自分。でも原盤権はレーベル」——この形だと、ヒットしてサブスク再生が伸びても、再生収益の大きな部分は自分の手元に来ません。ここを知らずにサインしてしまう人が、実は少なくありません。
1再生あたりの単価はごく小さく、その内訳も複雑です。数字の現実はサブスクの1再生あたりの単価と現実やストリーミング印税の仕組みで具体的に触れています。だからこそ、少ない単価でも「原盤を自分が持っている」ことの価値が、時間とともに効いてくるのです。
事務所やレーベルを離れるとき、いちばん見落とされやすいのが過去曲の原盤権です。原盤の費用を会社側が出していた場合、その音源の原盤権は退所後も原則として会社に残ります。つまり、独立してからも過去曲のサブスク収益は会社側に入り続ける、というケースがあり得ます。
これは「ずるい」という話ではなく、費用を出した側が権利を持つという原則どおりの結果です。だからこそ、入るとき・契約するときに原盤権の扱いを確認しておくことが、後々の自分を守ります。退所後の動き方は事務所を退所した後にやること、独立の始め方は独立アーティストの始め方で解説しています。契約書の読み方は音楽の契約書で必ず確認すべき条項リストもあわせてどうぞ。
むずかしく考える必要はありません。原盤権を守る原則は「自分の費用で録る」か「原盤権が自分に残る契約にする」か、この2つだけです。
バンドで活動していたレンさん(仮名・30代)は、所属していた小さなレーベルを円満に退所しました。ところが独立後、過去にリリースした4曲のサブスク再生が伸びても、その原盤収益は自分に入らないと知り、少し複雑な気持ちになったそうです。原盤の録音費用はレーベルが負担していたため、原盤権はレーベルに残っていたのです。
レンさんは「知らなかった自分が悪い、というより、そもそも契約時に誰も原盤権の話をしてくれなかった」と振り返ります。そこで独立後は方針を変え、新曲はすべて自分の費用で宅録し、外注するときは原盤権が自分に残る契約に。1年後、新曲群のサブスク収益は、すべて彼自身の手元に入るようになりました。
この事例が教えてくれるのは、原盤権は「後から取り返す」より「最初に握っておく」ほうがずっと簡単だということです。
A. 著作権は歌詞やメロディという曲そのものに発生する権利で、作詞・作曲した人が持ちます。原盤権は、その曲を実際に録音した音源に発生する権利で、原則として録音の制作費を負担した人が持ちます。同じ曲でも別々に録音すれば、原盤は別のものになります。作った人と録った費用を出した人が違えば、権利の持ち主も分かれます。
A. 原則は、録音の制作費を出した人です。自宅で自分の機材と費用で録れば、あなたが原盤権者です。レーベルや事務所が費用を出して録音した場合は、その会社が原盤権を持つのが一般的です。誰が費用を負担したかで決まるため、契約前に必ず確認しておくべき点です。
A. 音源が再生・利用されたときの原盤印税が入ります。サブスクの再生収益の多くは原盤側に配分されるため、原盤権を持っているかどうかは長期的な収入に大きく影響します。自分で録音して原盤を保有していれば、その収益がまるごと自分に入ります。
A. 事務所やレーベルが原盤権を持っている場合、退所後もその音源の原盤権は原則として会社側に残ります。過去曲の収益や再利用に関わるため、契約時に原盤権の扱いを確認しておくことが大切です。独立後は自分で録った新しい原盤を自分で保有していく形が基本になります。
A. 守れます。自分の費用と機材で録音すれば、原盤権は自動であなたのものです。誰かに録音や制作を依頼するときは、原盤権が自分に残る契約かどうかを事前に確認します。宅録やオンライン制作が広がった今、個人が原盤を保有したまま活動するのは十分現実的です。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
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