友達と一緒に曲を作った。トラックは彼が、歌詞は自分が、メロディは二人で。楽しかったのに、いざ配信して少しずつお金が入り始めると、空気がぎこちなくなる。「これ、どう分けるんだっけ?」。このひと言を最初に言えなかったせいで、仲の良かった相手と気まずくなる人を、私たちは何組も見てきました。印税の分け方は、才能でもセンスでもなく「段取り」の話です。作詞・作曲・編曲・原盤という取り分の仕組みを知り、比率を決めて、ひと言メモに残しておく。それだけで、ほとんどのトラブルは防げます。この記事では、共作した曲の取り分をどう決めるか、よくある比率、口約束の怖さ、その場で書ける簡単な合意書まで、実務とお互いの気持ちの両面から整理します。
もめる原因はお金そのものではなく、「決めていなかった」ことです。作っている最中はみんな夢中で、「細かいことは後でいいよね」と流してしまう。ところが配信で再生が伸びたり、タイアップの話が来たりすると空気が一変し、「あのメロは自分が作った」「歌詞を直したのは自分だ」と、記憶が都合よく上書きされて主張がぶつかります。
しかも貢献の大きさは目に見えません。「サビのメロを直したひと言」は記録に残らず、あとから言っても証明できない。だからこそ、まだ誰も損得を意識していない作り始めの段階で、役割と取り分をざっくり決めてしまうのが平和です。お金と権利の全体像は音楽の権利とお金 完全ガイドから押さえておくと、この先が読みやすくなります。
分け方の前に、印税が「一つの塊」ではないことを知る必要があります。印税は大きく「作品(曲そのもの)の権利」と「原盤(録音物)の権利」に分かれ、ここを混同すると話が永遠にかみ合いません。
| 種類 | 誰の取り分か | ざっくりした中身 |
|---|---|---|
| 著作権(作品) | 作詞者・作曲者 | 曲が使われるたびに発生。カラオケ・放送・配信など |
| 原盤権(録音物) | 録音に出資・制作した人 | その"音源"が再生・使用されたときの取り分 |
| 実演(歌・演奏) | 歌手・演奏者 | 実演家として録音に参加した対価 |
個人やインディーでは作詞・作曲・録音を全部自分たちでやるので、これらの要素が同じメンバーの中で重なります。だから「誰が何をやったか」を分けないと、取り分が丼勘定になります。特に配信のお金は原盤と作品の両方から発生するので、ストリーミング印税の仕組みで流れを押さえておくと配分がスムーズです。
いちばん質問が多いのがここです。作品(著作権)のうち作詞と作曲の取り分は、慣習的に作詞50%・作曲50%が基本形とされています。まずこの「半々」を出発点に置くと、話が進めやすくなります。
ただし絶対のルールではありません。歌詞を一人が書き、作曲を二人で分担したなら、作詞50%はその一人に、作曲50%を二人で25%ずつ。全員が納得すれば「作曲を多めに」と60対40にしても構いません。大事なのは正解探しではなく、全員が同じ数字に「うん」と言えることです。
| ケース | 作詞 | 作曲 |
|---|---|---|
| Aさんが詞、Bさんが曲 | A 50% | B 50% |
| 詞はA、曲はABで共作 | A 50% | A 25%・B 25% |
| 詞も曲も二人で共作 | A 25%・B 25% | A 25%・B 25% |
著作権は「作った瞬間に発生する」点も思い出しておいてください。取り分を決めるのは、その権利を誰がどれだけ持つかの話です。基礎や証明の残し方は自作曲の著作権はどう守る?にまとめてあるので、共作の前に一度目を通しておくと安心です。
意外と揉めやすいのが編曲とトラックの扱いです。日本の慣習では編曲(アレンジ)は著作権使用料の分配対象に入らないことが多く、アレンジ料としての買い取りで処理されるのが一般的です。つまり「印税を分ける」より「一度お金を払って終わり」の形が主流ということです。
ところが現代は、トラックメイカーがコードやメロディの骨格まで作ることが珍しくありません。それは編曲というより実質的な作曲で、「ただのアレンジ」で片付けると貢献の大きい人が損をし、後で不満が出ます。「何を作曲とみなすか」を最初に言葉で決め、骨格を作った人は作曲者に含めておけば、火種が一つ消えます。原盤(録音物)の取り分は「誰が録音にお金と手間を出したか」で考えます。スタジオ代や機材を一人が負担したならその人を厚く、割り勘なら均等が自然。作品の取り分と原盤の取り分は別物なので、必ず分けて話し合ってください。
正解は一つではありませんが、現場でよく使われる落としどころを知っておくと、話し合いの基準になります。あくまで例として、代表的なパターンを挙げます。
| 編成 | ありがちな配分 | ひとこと |
|---|---|---|
| ボーカル+トラックメイカー | 作詞50/作曲50(トラック側を作曲扱い) | いちばん典型。編曲でなく作曲とみなす |
| バンドで全員参加 | 楽曲は均等割り、原盤も均等 | 「全員で作った」を明文化しておく |
| 詞・曲・アレンジが別々 | 詞50/曲50、アレンジは買い取り | アレンジ料の金額を先に決める |
| プロに一部依頼 | 依頼分は買い取り or 数%の取り分 | 依頼時に契約書で明記 |
迷ったら「この曲がなかったら成立しない要素を、誰がどれだけ担ったか」で測ります。歌詞がなければ歌えない、メロがなければ曲にならない、録音がなければ配信できない。その「なくてはならなさ」を見比べて比率に落とす。1%を争うより、全員が「まあ、そうだよね」と思える線を探すほうが、長い目で得です。
ここがいちばん伝えたいところです。口約束は、ほぼ確実に後でこじれます。「だいたい半々でいいよね」は、ヒットした瞬間に「あれは仮の話だった」に化けます。悪気ではなく、記憶が都合よく作り替えられるからです。だから、まだ誰も損得を意識しないうちに文字にしておく。
合意書といっても、弁護士も難しい書式もいりません。A4一枚、スマホのメモやLINEのトーク一つでも十分です。その場で次の項目を書き、全員の名前を入れるだけです。
これだけで、後々のトラブルの九割は防げます。コツは、揉めてから作るのではなく仲が良いうちに作ること。「ちゃんとしておこうね」の一文は、相手を疑う行為ではなく、関係を長く続けるための保険です。きちんと決めておくほうが、お互い気持ちよく次の曲を作れます。
仕組みが分かっても、いざとなると切り出しにくい。「がめつく思われないか」と身構えてしまう。その気持ちはよく分かります。でも、いちばん角が立たないのは作り始める前に、軽く先回りして言ってしまうことです。
「この曲、ちゃんと分けたいから、後で取り分だけ一緒に決めよう」。あるいは「配信して何か入ってきたら揉めたくないから、最初にメモ残しておかない?」。完成してお金が絡んでから言うと生々しいけれど、まだ何も生まれていない段階なら、ただの段取りの相談として自然に切り出せます。この一言を言えるかどうかが、後の数年の関係を左右します。
この「先に決めておく」という発想は、印税に限りません。誰と、どんな役割で、何を目指すのか。早めに言葉にする人ほど、長く音楽を続けられます。作詞を担当するなら書き方を磨いておくと交渉でも一目置かれるので、作詞のやり方も覗いてみてください。取り分は優劣の点数表ではなく、お互いの貢献に敬意を払い、気持ちよく続けるための地図です。
STAR ROUTE MUSIC AGENCY
共作の取り分、契約書の書き方、配信の権利まわり。調べれば調べるほど分からなくなって、切り出せないまま曲だけが増えていく。そういう相談を、スタールートはこれまで何度も受けてきました。スタールートは、書類やフォロワー数だけで一方的に判断しません。まずオンラインで面談し、今どんな仲間と、どんな曲を、どう分けようとしているのかを直接聞くところから始めます。権利やお金の整理はもちろん、楽曲制作・SNSでの届け方まで、全国どこからでも完全オンラインで一緒に考えます。相談は何度でも無料、無理な勧誘はありません。あなたの音楽を、次の一歩へ。まずは気軽に声を聞かせてください。
A. 著作権使用料のうち作品部分については、作詞50%・作曲50%で分けるのが慣習的な基本形です。ただしこれはあくまで出発点で、実際の貢献度に応じて話し合いで変えても構いません。二人で詞を共作したなら作詞分の50%をさらに二人で分ける、という形になります。大切なのは比率そのものより、関わった全員が納得して合意していることです。
A. 日本の慣習では、編曲は原則として著作権使用料の分配対象に含まれないことが多く、買い取り(アレンジ料)で処理されるのが一般的です。ただし、トラックメイカーがコードやメロディの骨格まで作っている場合は、実質的に作曲者として扱うのが自然です。何を作曲とみなすかを最初に決め、編曲は使用料か買い取りかをはっきりさせておくと、後で食い違いません。
A. もめる典型が口約束です。作っているときは仲が良くても、曲がヒットしたり関係が変わったりすると、記憶の食い違いが対立になります。比率と、作詞・作曲・原盤の役割分担を、A4一枚でいいので文字に残しておくことを強くおすすめします。日付・曲名・氏名・比率・署名があれば十分な合意メモになり、多くのトラブルを未然に防げます。